いい葬儀社と出会えるために
はじめてのお葬式で、しかもお葬式の喪主を務めるのは、人生でせいぜい1度くらいではないでしょうか。
自分が喪主となるのは、親の葬儀、配偶者の葬儀、子の葬儀ぐらいであり、親の葬儀も自身が長男でなければ務めないこともありますし、配偶者の葬儀も自分が先立つと喪主をすることなんてできません。不幸にも子を先に亡くすという経験がなければこれもあてはまらず、もしかしたら喪主なんて一生経験しないという可能性も充分にあるわけです。
日用品や消耗品など普段から買うものであれば、自分の経験から比較検討などできるのでしょうが、お葬式となるとなかなかそうはいきません。
インターネットや書籍でいろいろと勉強されるのはもちろん大事なことですが、それらだけでは肌身に感じて「いいお葬式、悪いお葬式」を実感するにも限界があります。
あなたのお葬式が素晴らしいものになるためのアドバイスをお教えいたします。
終活セミナーなどのイベントへの参加
最近ではさまざまな企業や団体が、葬儀や供養のためのイベントを開催しています。家族葬セミナーや終活フェアや会館見学会などを行っていますので、まずはそれらに参加することをおすすめします。
現在の最先端のお葬式の事情を身を持って知ることで、何よりもお葬式をより具体的にイメージできるはずです。
互助会系の葬儀社や、会員制度を設けている葬儀社は、入会を促してくることがあるでしょうが、それらの誘いには安易には乗らずに、じっくり検討されるとよいでしょう。
喪主を務めた方に葬儀社の評判を訊く
これだけ情報化や合理化が進んだ世の中でも、お葬式はきわめて地域に根差したものとして執り行われます。家族葬が普及したために、社縁(会社関係者)や地縁(自治会や隣保)などによる参列が希薄になったとはいえ、多くの方は、それが古くから営まれている葬儀社であれ、新参の葬儀社であれ、地元の葬儀社を利用されます。
お互いがお互いの葬儀に参列しないだけで、多くの人たちが自分たちの町の葬儀社を利用しているわけです。
ですから、親戚や知人に葬儀をされた方がいるならば、その方々に葬儀社の評判を訊いてみましょう。
ただ高い安いといった金額面だけではなく、会館が充実しているか、スタッフの対応は誠実であったかなど、生の声は大きな参考になるだけでなく、その方があなたの知人であるならば、広告や宣伝では語られることのない本音の部分が浮き彫りになることでしょう。いわゆる「口コミ」を通じてこちらから情報収集してみましょう。
参列の際に、意識して会館を見定める
もしもあなたが知人の葬儀に参列することがあるならば、その会館を意識的に見定めてみましょう。
故人を追悼するための参列ですから気が引けるかもしれませんが、実際に施行しているお葬式の中に入って、その葬儀社のサービスを体験するというのはなかなかできないことですので、ぜひおすすめします。
具体的なポイントをいくつか挙げてみます。
- 自宅からの行きやすい場所にあるか
- 駐車場は充実しているか
- 式場の広さが自分たちの希望している葬儀スタイル(家族葬なのか、あるいは参列者を招くのか)に適しているか
- 会館内はきれいに清掃されているか
- スタッフの誘導案内は親切で分かりやすいか
もちろん、参列者の立場では、葬儀費用や葬儀社のスタッフが誠実かどうかなど分かりかねるでしょうが、参列者の立場から見渡せるものもたくさんあると思われます。
あと、あえてスタッフに何かを質問してみるのもいいでしょう。「トイレはどこなのか」や、「数珠を忘れたのだけどなんとかしてほしい」など、その対応を見てみるのもいいでしょう。
また、通夜や葬儀の案内スタッフは、専門業者からの派遣スタッフを配置しているケースが多いので、その葬儀社の社員について見定めたいのであれば、事務所などをこっそり尋ねて、会館について質問してみるのもいいでしょう。
あくまでも参列者なので、節度のある範囲でその会館をチェックしてみましょう。
ホームページの透明性を見極める
先に書いたようにお葬式は地域に根差していますが、首都圏などでは大小の葬儀社が乱立しています。1都4県をまたぐ零細の葬儀社もありますし、知人の方が依頼した葬儀社がどこか分からない、なんていうこともよくあることでしょう。
インターネットで葬儀の依頼を考えている方は、充分にその葬儀社の情報を把握しましょう。
会社の住所、電話番号、メールアドレス、代表者名、資本金、従業員数、沿革などがきちんと明記されているか。スタッフの顔や名前がホームページ上に表示されているか。見掛け倒しの葬儀社もあるかもしれませんが、これらができている葬儀社は比較的オープンに情報を開示してくれる傾向にあると言えるでしょう。
情報格差を葬儀社側から埋めてくれるか
「情報格差」や「情報の非対称性」なんていう言われ方をしますが、売り手と買い手の情報量に格差があるということです。
たとえば自動車を購入するときには、エンジンやインテリアやエクステリアなど、あちらこちらから調べ上げてさまざまなディーラーを周られた上で、見積もりを比較検討する方もいると思いますが、お葬式はなかなかそうはいかないですよね。
それこそ終活セミナーなどの普及により、消費者側も葬儀のさまざまな情報を手に入れようとしていますので、一時期に比べれば格差も少なくなってきたと言えるのかもしれませんが、それにしてもまだまだ不明瞭な点はたくさんあります。
葬儀社が情報開示を積極的に行うというのは、ただ安ければいいというものではなく、「なんでお葬式にはこんなにお金がかかるんだろう?」という消費者側の不安を取り除くという側面もあります。
納得いく商品にはお金を出す。その商品に価値を感じればお金を出す。そういう方もたくさんいらしゃることでしょう。
普段から金額だけにとどまらないさまざまな情報を開示している葬儀社は、きっと料金体系も明瞭でしょう。
消費者の側が書籍やインターネットやさまざまなイベントに参加してお葬式についての知識や情報を仕入れて勉強した上でなければ、葬儀社のスタッフが提供する情報が本当に誠実かどうかなんて分かりません。
良心的な葬儀社に巡り合うためにも、事前の勉強をしておくのは、納得いくお葬式への最良の道だと考えます。
相手も人間だとわきまえる
葬儀社のスタッフも人間です。いくら顧客と業者という関係であれ、横柄な態度で接すると、スタッフの反感を買ったり、あるいは委縮させてしまったりします。そんな関係性で良好なお葬式を執り行うことは難しいでしょう。
まして、お葬式はそれこそ「人」が集まって作り上げていくものです。ですから、担当となるスタッフとともにいいお葬式を作り上げるんだ、という共通の意識の中取り組むことができれば最良ですよね。
ただし、もちろん気になることや言うべきことはきちんと口に出しましょう。お葬式は不慣れで分からないことや心配なことがたくさん出てきますが、恥ずかしかったり、タイミングがなかったりで、訴えることなく我慢して消化不良を起こしてしまうこともあり、それこそいいお葬式でなくなってしまうこともあり得ます。
言いたいこと、言うべきことはきちんと訴えた上で、スタッフを信じて尊重してあげましょ。
事前相談のすすめ ~人と企業を見極める~
葬儀社は無数にあります。どのような地方であれ、一つの地域に2社以上は葬儀社があるものです。前もってお葬式をお考えの方は、事前相談やホール見学会に申し込んで複数の葬儀社を比較検討し、お葬式のイメージを具体化しておくのが賢明でしょう。
実際にご不幸が起きると、家の中はみなさまが思われている以上にばたばたと慌ただしくなります。病院や警察は、所定の手続きが済んだあとは速やかにご遺体を搬送してほしいわけですから、遺族の方に急な判断が求められます。
- 遺族は急いで葬儀社の手配をしなければなりません。
- 搬送先を決めなければいけません。
- 自宅に連れて帰るならご遺体を安置する部屋を整えておかなければなりません。
- 親戚に連絡をしなければなりません。
- ある程度のまとまった現金の用意をしなければなりません。
- 会社や学校に連絡をしなければなりませんし、進行中の仕事がある場合はその引継ぎなどもしなければなりません。
、、、などなど、これらを死別の悲しみの中で取り仕切ることが求められます。
しかも、病院で息を引き取る、いわばある程度予定されたご逝去であればまだしも、事故や急な容体の悪化などによる突然死の場合、遺族の方の動揺は計り知れず、その上慌ただしさも増し、冷静な判断は容易ではありません。
事前相談は費用をただ相見積もりするためではなく、誰にでもいつか必ずやってくる死に、どのように対応するべきなのかを考える上でもとても意義のあることだと思われます。
さて、相見積もりや事前相談をする上でどのよう点に気をつければよいのでしょうか。
ずばり、「人」と「企業」を見極めましょう。そのスタッフが、葬儀社が、信頼に足るかどうか、見極めのポイントを挙げます。
①まずは複数の葬儀社に資料請求する
いきなり葬儀社やホールに訪問してしまうと入会手続きまで強引に押し進められることもあります。まずは電話やインターネットなどから資料請求をするのがよいでしょう。
- 電話やメールでの対応が丁寧だ
- 夜間の問い合わせにも丁寧に対応してくれる
- サービスエリアは合致している
- ホームページに、企業情報(概要、沿革、所在地、資本金、従業員数、社員紹介など)が記載されている
②届いた資料や見積書をチェックして企業の「透明性」を見極める
どのような葬儀社でもはじめの提案では安い見積金額を提示して施主の気を引くのが通例です。葬儀費用の明細が細かく記されているか、商品説明は明瞭かを見極めましょう。
- きれいで分かりやすいパンフレットだ
- 商品は写真付きで分かりやすく説明されている
- 見積書の明細が明瞭だ(会葬人数や食事や返礼品も含めた見積書になっている)
- プラン以外の個別の選択肢も分かりやすく用意されている
- 消費者にも分かりやすい言葉が用いられている
- 資料が届いた後にしつこい電話や訪問による勧誘がない
③葬儀社を2社にしぼり、スタッフの「人」を見極める。
対面相談では、疑問に思っていることは必ず言葉にして訊ねましょう。そしてスタッフの対応力や知識や経験の豊富さだけでなく、何よりも誠実さや心配りを感じられるかをチェックしましょう。
- 身なりに清潔感がある
- どのような質問にも納得のいく答えが返って来る
- 低予算の相談にもいやな顔をせずに対応してくれる
- 専門用語を用いずに、分かりやすい言葉で説明してくれる
- 無理な勧誘をしない
多くの葬儀社は会員制度を設けています。
よほど事前相談でその葬儀社が信頼に足るようであれば入会してよいでしょう。
入会することで特典が利用できたり、いざという時の対応が迅速になったりといったメリットもありますが、年会費や更新料の有無など、入会が後々の負担にならないように慎重に判断しましょう。