お別れ会や偲ぶ会とは?
「葬」と「会」
昨今ではさまざまなお葬式のスタイルが提唱されています。家族葬や無宗教葬やリビング葬や自由葬など、○○葬と謳う独自のスタイルを打ち出してはそれぞれの葬儀社が顧客獲得に躍起になっているのが葬儀業界の現状だと思われます。
しかし、○○葬ではない故人との別れの場もあります。
お別れ会や、偲ぶ会などです。
「葬」と「会」ではその意味合いも大きく異なってきます。
「葬」とは亡くなった故人を「葬る」儀式の事を言います。それが家族葬であれ、無宗教葬であれ、リビング葬であれ、自由葬であれ、はたまた直葬のような簡素なものであれ、その目的は故人を葬ることにあります。
「会」は、むしろ故人を葬った後に行われるものです。故人を中心に据えた社交の場と言えるかもしれません。
密葬と本葬
著名人や会社の重役など、広く訃報を流す必要のある方の葬儀は二段階で行われることが多く、まず密葬を行い、それから本葬を行います。
「密葬」とは最近では直葬や家族葬など、誰にも知らせずに執り行う簡素なお葬式のことを指していると思われている方も多いのですが、本来は、のちに「本葬」を執り行うことを前提とした、家族だけの葬儀の事を指しました。
社会的に影響の大きい方には多数の参列者に来ていただきたい。そのための準備や段取りには時間が必要ですし、遠方の方や多忙の方にも参列いただけるように早めに訃報を流す必要があります。
そのため、寺院による回向、授戒、そして火葬などという「密葬」をまず家族親族だけで済ませ、後日一般会葬者を招く「本葬」を執り行います。
本葬では祭壇に遺骨を祀り、寺院に改めて読経をいただき、会葬者は焼香します。
お別れ会や偲ぶ会の内容
さて、この「本葬」を寺院の読経や焼香、といった葬儀スタイルではなく、パーティースタイルで開催するのが「お別れ会」や「偲ぶ会」なわけです。
この場合、主催者側は参列いただきたい方に招待状を出しますので、誰でも彼でも故人に会いにいけるというものではありません(そのようなスタイルもあるかもしれません)。
場所はホテルで行われることが多く、会場にはきれいな花祭壇を設え、献花台、そして、ビュッフェやフルコースなどの料理を楽しみながら故人の面影を偲びます。ステージ上での余興や、弔辞、故人を偲ぶスライドショーや映像の上映など、企画に決まりごとはもちろんありません。
最近では、企業や団体だけでなく、個人でもお別れ会や偲ぶ会を開催することも増えているようです。お別れ会や偲ぶ会に特化した業者もあるようなので、興味のある方は訊ねてみるとよいでしょう。
お別れ会の場所にはホテルが選ばれていることが多いです。
もちろん、葬儀会館でお別れ会を行うことも可能ですが、葬儀会館は「喪」や「葬」のイメージがどうしても強く、逆にホテルではホテルマンのサービスや、空間や料理のクオリティに期待ができます。
「ホテルで葬儀ができないのか!」という声をよく聞きますが、ホテルでは遺体の安置を原則認めておらず、ホテルでの葬儀は現実的ではありません。法事法要やお別れ会までが開催可能です。
葬儀の価値が何なのかと考えますと、それは、亡くなった方とつながりのあった一人でも多くの方が故人の死を偲びに会いにやって来ることでしょう。
僧侶の読経や華美な祭壇や豪華な接待が敬遠されて久しく、その反動としての直葬や家族葬に不足しているものも最近では指摘されるようになってきました。
故人とその関係者が一堂に会し、しめやかにではなく明るくなごやかに故人を偲ぶことのできる場として、お別れ会や偲ぶ会には、これからの時代の葬送のありかたの可能性をたくさん秘めているのではないかと、筆者は考えます。
故人を中心に据えたパーティーを、みなさんも考えてみてはいかがでしょうか?