JA・生協などの共同組合系の葬儀社
協同組合は、個人あるいは事業者などが共通する目的のために自主的に集まり、その事業の利用を中心としながら、民主的な運営や管理を行なう営利を目的としない組織です。
IYC記念全国協議会サイトより http://www.iyc2012japan.coop/index.html
組合員が出資金を出し合い、相互扶助の精神で運営していくのが協同組合です。近代的な協同組合は19世紀にヨーロッパで始まり、1900年には日本でも産業組合法が制定されます。
日本で主要な協同組合といえば、JA(農業共同組合)、JF(漁業協同組合)、コープ(生活協同組合)などがあります。日本では事業内容ごとに特別法で協同組合が規定されています。JAは農業協同組合法、コープは消費生活協同組合法、といった具合です。
そんな共同組合が葬儀業界に新規参入。これは一体どういうことなのでしょうか。国内最大の協同組合であるJAを例に話を進めます。
共同組合が葬儀業界に参入する背景
葬祭業は制度的な参入障壁がない
葬祭業はそもそも許認可制ではないので、いつでもだれでも葬儀社を開業できる状況にあります。
共同組合だけでなく、ホテルや電鉄会社などの大資本を保有する企業や、生花店や石材店などの同業からの新規参入もあります。
共同組合の事業は組合員のためのものである
JAの場合、農家をしている人々が組合員となり、出資金を出し合い、JAを運営、そして利用しています。
JAには「農協3事業」というものがあります。
- 経済事業…農産物の販売、農機や肥料などの購買、ガソリンスタンドやスーパーマーケットの経営など
- 信用事業…JAバンク。預貯金や貸付、証券の取り扱い
- 共済事業…JA共済。生命保険や損害保険
しかし、これら3事業の以外にもさまざまな事業を展開しています。病院、医療や介護サービス、観光旅行業、不動産業、自動車のディーラーなどなど、その中に、葬祭業も含まれている、ということです。
これだけの事業展開ができるということはそれだけの資本があるということです。JAの会館は大資本と広大な土地をバックに、立派なものが建設されています。しかも組合員向けの事業のため、組合員であれば比較的安く使用することができます。
法人化される葬祭事業
数あるJAの事業の中でも葬祭事業は収益性が見込めると言われています。
また、共同組合による事業である以上、農協法により販売価格に制限があるのですが、法人化(株式会社化)することでその制限から解放されます。輸入品の増加などの理由によって、農産物や肥料や農機具などいった販売事業の不振もあり、非組合員からの収益を増加させなければならないなどの昨今のJAを巡る諸事情から、葬儀部門は次々と法人化されています。そしてそれらのほとんどは各地域のJAが株主として出資しています。
(法人化された葬儀事業の一部)
- 株式会社JA秋田葬祭センター
- 株式会社JAライフちば
- 株式会社JA東京中央セレモニーセンター
- 株式会社農協葬祭
- 株式会社JAやすらぎセンター
中には法人化せずに葬祭サービスを提供しているJAもあるようです。また、葬儀に限らず葬儀後の仏壇や墓石や霊園の斡旋や分譲をしているところもあるようです。
JAは一つの統一組織ではなく、それぞれのJAの独自の態勢で経営されています。完全自社施行の所もあれば、JAが窓口になるだけで施行は提携の葬儀社に丸投げというところもあります。
組合員の方はJAの葬儀社を利用されるとさまざまなメリットがあるでしょうし、非組合員の方も、他の一般葬儀社と同じように検討されてみてもよいかもしれません。