銀行口座の凍結と解除
故人の名義の銀行口座は、銀行が故人の死亡の事実を確認した段階で、一度凍結されます。出金も入金も、引き落としも振り込みもできなくなります。故人の預貯金をあてにしていた場合、これは非常に厄介です。
「なぜ凍結するの?」
「どうやったら凍結が解除できるの?」
今回は銀行口座の凍結と解除について触れてみます。
銀行口座の凍結
銀行口座から預金を引き出す際に注意しなければならないのは、亡くなった本人の口座から預貯金を引き出して葬儀費用に充てる時です。
というのも、銀行は故人の死亡の事実を知った段階で口座を凍結します。
なぜ凍結するのか。
それは、その人の「財産」は死亡と同時に「遺産」となるためです。遺産となってしまった以上、法定相続人に対しての相続の対象となり、親類のうちの誰か一人が勝手に預貯金を引き出すことは原則として禁じられているために、銀行は法定相続人全員の権利を守るのです。そのための凍結です。
銀行も相続争いに巻き込まれたくないわけです。
さて、銀行がどのタイミングで口座を凍結するかというと、「故人の死亡の事実を知った段階」です。
では、どうやって「故人の死亡の事実」を知るのでしょうか。
巷でよく言われますが、死亡届を役所に提出することでその情報が金融機関に伝えれらる、というようなことはありません。
よく言われているのは以下の3点です。
- ①死亡広告などで死亡の事実を把握する
- ②外回りの営業マンによる情報
- ③銀行窓口で遺族から直接死亡の事実を知らされる
①と②は想像に難くないでしょうが、③は一体どういうことでしょうか。
最近ではATMの引き出し額が制限されています(1日の利用限度額が50万円という所が多く、これでは葬儀費用をまかないきれないケースが多いです)。
この場合、ATMではなく、窓口に出向くことになりますが、振り込め詐欺が横行して社会問題になっている昨今、高額の引き出しの際には銀行員が使用目的を尋ねることが多く、そこで遺族が故人の死亡の旨を話し、死亡の事実を把握するわけです。
故人の預貯金は遺産です。相続が確定するまではこの遺産は相続人全員の共有財産となるのですが、葬儀費用や入院費の支払いなど、どうしても急を要する理由であれば、150万円程度までは銀行は引き出しに応じてくれることが多いようですので、まずは銀行に訊ねてみましょう。
また、公共料金などの支払いを故人の口座からの引き落としにしている場合、それらも停止されてしまいますので、手続きは迅速に行いましょう。
銀行口座の凍結の解除
銀行口座の凍結の解除については、まずは必ず銀行に問い合わせてみましょう。銀行によって必要書類や手続きが異なる場合があります。
一般的には以下の用意が必要となります。
- ①故人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍・改正原戸籍)
- ②相続人全員の戸籍謄本
- ③相続人全員の印鑑証明
- ④故人の実印・通帳・キャッシュカード
- ⑤銀行所定の用紙(遺産分割協議書など)
①は大変です。故人がもしも転籍(本籍地を変更すること)を何度も繰り返していた場合、それらすべての市区町村からの謄本の取り寄せが必要となります。
②や③は相続人全員のものが必要となります。
相続人全員と連絡を取れる状態にあればよいのですが、長年疎遠になっている、連絡は取れるが仲がいまいちよくない、相続の理解を得られるか分からない、など、家庭によって事情はさまざまでしょうが、相続人全員の「遺産」であり、凍結解除のためには必ず必要な書類ですので、入手できるようにいたしましょう。