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お葬式はなぜするの? ~お葬式の果たす5つの役割~

人が亡くなるとお葬式を出すというのは、人間の営みの中でも当たり前すぎるかもしれませんが、改めてそのことについて考えてみませんか?

「葬儀の簡素化」「自分らしい葬儀」「人に迷惑をかけない葬儀」など色々なキャッチコピーが出回っていますが、なぜ人は亡くなった人を悼み哀しむのか、葬儀という儀式の意味と役割を考えてみましょう。

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葬儀の果たす役割

葬儀の役割は以下の5つだと言われています。(碑文谷創著『葬儀概論』より)

①社会的な処理(社会的役割)

→社会的にその人の死を告知すること。戸籍からの抹消、相続手続き

②遺体の処理(物質的役割)

→土葬や火葬

③霊の処理(文化・宗教的役割)

→死者の霊をこの世からあの世へ送り出す宗教的儀礼

④悲嘆の処理(心理的役割)

→死別に伴う悲嘆の慰撫。追善供養、グリーフケア

⑤さまざまな感情の処理(社会心理的役割)

→共同体に与える畏怖の和らげ

こう見てみると、①は社会的、②は物質的役割なのに対して、③~⑤は精神的な役割であることが分かります。

葬儀というものがいかに精神性に根差した儀式であるか。これら全てが満たされて葬儀の役割を果たすのならば、現代の葬儀スタイルはいささか欠陥だらけと言わざるを得ないです。

どのような場面であっても必ず満たされるのは②です。

現代人とて、亡骸を放置していれば必ず腐敗が始まるわけで、公衆衛生の観点から、遺体は必ず荼毘に付されます。盛大なお葬式をされる方でも、直葬の方でも、行旅病者の方でも、遺体は必ず荼毘に付されます(ちなみに2010年現在の日本の火葬率は99.94%です ※日本環境斎苑協会調べ)

現代社会は精神性よりも物質や経済が優先されていますので、②だけが必ず満たされるという現象は、極めて今の時代の特徴を表しています。

①社会的な処理(社会的役割)について

①に関しては2つのことが当てはまります。

つまり役所への報告(死亡届の提出)と、縁故者への報告(訃報の連絡)です。

死亡届は必ず役所に提出しなければなりません。

でなければ火葬許可証は発行されませんし、火葬場は遺体を火葬してくれません。勝手に火葬してしまうと死体等損壊罪(刑法第190条)で罰せられます。

しかし訃報となりますと、昨今では多くの方々がこの作業を放棄しています。

いわゆる「家族葬」や「直葬」に代表されるスタイルです。故人の死は遺族のものだけではありません。故人にも社会的つながりがあり、故人の死はその人たちのものでもあります。その部分が省略されているということは、人と人とのつながりが希薄になってきていることを表しています。

③霊の処理(文化・宗教的役割)について

③は宗教者が担う役割ですが、宗教への信頼もぐらついている世の中です。

葬儀の場面でも葬儀社が寺院を手配するという図式が一般化していますが、これも葬送の中心が宗教(寺院)から経済(葬儀社)に移っていることを表しています。

宗教の弱体化、そして現代人が死後の世界(あの世)の存在を信じきれない以上、③はその役割を果たすことができないのです。

④悲嘆の処理(心理的役割)

④も③と同じです。僧侶の読経に依る通夜葬儀、そして四十九日のあとにも続いていく追善供養の法要はまさに日本版のグリーフケアシステムでしたが、心の拠り所を宗教に向けることができない昨今、人々は「自分らしいお葬式」をプロデュースして、「自分らしい仏壇やお墓」を構えて、自分自身で悲嘆を和らげようとしています。

⑤さまざまな感情の処理(社会心理的役割)について

⑤について、たとえば菅原道真天神信仰(道真が亡くなった直後から続いた異変が道真の祟りに依るものだと信じられたことから、彼の荒魂を鎮めるために日本全国に天満宮が建立された)や、一昔前の日本の村落での喪服の慣習(村の中のある家で不幸が起きるとその穢れが村中に広がることを恐れて、その家の人間は四十九日間外出を控えて喪に服した)など、共同体の意識が崩れ、「荒魂」や「穢れ」意識が希薄化する現代の世の中ではその役割も意味をなくしてしまっています。

まとめ

経済的なお葬式。自分らしいお墓。人々は合理的に経済的に、自分たちの望む葬送のスタイルを求めていますが、果たして個々人1人1人が供養やグリーフケアの専門家なのでしょうか。

実は、供養の専門家としての寺院へのニーズは未だに健在です。

いざ自分の身内の死に接した時に、僧侶の厳かな経文の響きは身体中に沁み渡り、哀しみを優しく慰め、人間個人だけではコントロールできない、人の生命の壮大さを目の当たりにさせるものです。

ニーズはある。だけど、仏教界がそのニーズに応えきれていない。これこそが現代の葬送業界の課題であると思います。

人類はこれら①~⑤を満たすために、葬儀という通過儀礼を執り行ってきました。

よいお葬式とは、きっと盛大さやオリジナル性なんかではなく、これらを満たす身の丈にあったお葬式のことなのではないでしょうか?

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