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浄土真宗の仏具

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浄土真宗は独特な宗派です。信仰に対する考え方が日本国内の他の仏教宗派と異なる面が多いのです。

いや、具体的に見ればどの宗派も、たとえば、かつては「東密」と「台密」と呼ばれ鎮護国家としての仏教の覇権を2分した真言宗と天台宗も、同じ禅宗の臨済宗と曹洞宗も、よくよく見れば違うところは大いにあります。

でも、普段普通に生活している私たちにとって、それぞれの宗派の教えなんて分からないですよね。どの宗派でも、同じような仏壇で、同じような祀り方で、同じような法事をし、同じような法要を執り行います。

ところが、浄土真宗だけは、素人からしても、「他とは違う」面がたくさんあるわけです。

たとえば、「位牌がいらない」「塔婆もいらない」「飲み物を供えない」「盆参りがない」などなど、それ以外の宗派はこれら全部を必要としますが、浄土真宗では全部不要だと考えられています。

そうすると当然仏壇の形状や、仏具の形状も、使い方も変わってくるわけです。

ここでは、浄土真宗の仏具について触れてみます。

 

本尊

本尊とはその仏壇の上段中央に安置する仏さまです。通常、どの宗派でも両脇の脇仏もセットで、三尊を祀り、それは浄土真宗も例外ではありません。

ちなみに、主な宗派の本尊は以下の通りです。

宗派 中央
天台宗 伝教大師 最澄 阿弥陀如来など 天台大師 智顗
真言宗 不動明王 大日如来 弘法大師 空海
浄土宗 法然上人 阿弥陀如来(舟弥陀) 善導大師
浄土真宗(西) 蓮如上人 阿弥陀如来

(後光が8本)

親鸞聖人

 

浄土真宗(東) 九字名号

南無不可思議光如来

阿弥陀如来

(後光が6本)

十字名号

帰命尽十方無碍光如来

臨在宗 栄西禅師 釈迦如来 達磨大師
曹洞宗 常済大師 蛍山 釈迦如来 承陽大師 道元
日蓮宗 大黒天 曼荼羅 鬼子母神

本尊の安置には、仏像と掛軸と二つの方法がありますが、浄土真宗では掛軸を掛けることが多いようです。

というのも、掛軸は仏具屋さんで市販されているものでもよいのですが、浄土真宗では本願寺派であれ大谷派であれ、本山からご本尊を授かる慣例があります(本山掛軸)。必ずしも本山掛軸を授からなければならないわけではありませんし、費用は、仕様にもよりますが、市販のものの倍近く、あるいはそれ以上しますので、よく菩提寺と相談しましょう。

仏像を安置してはダメと言うわけではありません。

浄土真宗では何よりもご本尊である阿弥陀如来を大切に礼拝しますので、どのような形がよいのか、迷われたら寺院に相談しましょう。

 

華鋲(けびょう)

華鋲とは、樒やしゃしゃきなどの青い葉を入れて備えるための仏具です。自宅の仏壇用であれば、高さが5~6センチくらいの小さな水差しの仏具で阿弥陀如来のご尊前に供えます。

浄土真宗では湯茶などの飲み物をお供えしません。これは、極楽浄土にあると言われている七宝池に八功徳水というありがたい水が湛えられているために、飲み物を供えなくてもよいとされているからです。『浄土三部経』の中でも重要とされている『仏説阿弥陀経』の一節です。

又舎利弗 極樂國土 有七寶池 八功徳水 充滿其中 池底純以 金沙布地 四邊階道

金銀瑠璃 玻璃合成 上有褸閣 亦以金銀瑠璃 玻璃硨磲 赤珠瑪瑙 而嚴飾之 池中

蓮華 大如車輪 青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光 微妙香潔 舎利弗 極楽

國土 成就如是 功徳莊嚴

舎利弗よ。極楽国土には、七宝(金・銀・瑠璃(青玉、今でいうラピスラズリか?)・玻璃(水晶)・蝦蛄(シャコガイの貝殻)・珊瑚(サンゴ)・碼碯(メノウ))の池があって、八つの功徳(澄浄・清冷・甘美・軽軟・潤沢・安和・除飢渇・諸根)を供えたありがたい水が、その池を満しているのだよ。

池の底には黄金の砂が布かれていて、池の四辺の階段は、金・銀・瑠璃・玻瓈からできている。階段の上には楼閣があって、これもまた、金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠(赤真珠)・碼碯で、厳かに装飾されているのだよ。

池の中の蓮華は、まるで大きい車輪のようだ。その上、青色の蓮華は青光、黄色の蓮華は黄光、赤色の蓮華は赤光、白色の蓮華は白光を放ち、これらさまざまな色の蓮華がまばゆく輝いている。

舎利弗よ。極楽国土ではこのようにありがたい功徳が荘厳されているのだよ。

(参考文献:中村元・早島鏡正・紀野一義訳注『浄土三部経(下)』岩波文庫)

華鋲が阿弥陀如来のまわりに広がる七宝池を、その中に注いだ水が八功徳水を、樒やしゃしゃきの青い葉がまばやく輝く蓮華を表しているのだと言えます。

 

仏飯器(ぶっぱんき)

仏飯とは、仏様にお供えするごはんのことです。これは浄土真宗に限らずどの宗派でもお供えします。

本願寺派(西)では3つ供えますが、大谷派(東)では中央の阿弥陀如来にのみ供えます。これは、大谷派の脇仏が仏や人物ではなく、阿弥陀仏を表す文字(名号)だからです。

 

盛曹(もっそう)

盛曹とは、大谷派(東)でのみ使用する仏具です。通常、多くの宗派ではごはんを山盛りにすることが多いのですが、大谷派では筒状に盛ります。筒状の容器の中にごはんを詰め込み、押し出して盛るための道具です。

 

四具足

本願寺派(西)における阿弥陀如来のご尊前に飾る4つの仏具です。これらは、上卓(うわじょく)と呼ばれる机の上に置いて飾られます。左右には一対の華鋲。中央に火舎香炉。そして火舎香炉の後方にローソク立てを置き、ローソクは木でできた木蝋というものを立てます。大谷派には四具足はありません。

 

上卓(うわじょく)

前述のように、ご尊前に置く机です。本願寺派では四具足を並べます。大谷派では四具足はありません。華鋲と火舎香炉を並べます。

ただし、これらは仏壇の大きさによって限りがあるために、すべてがこの通りに行くわけではありません。よく見られる形は、上卓に華鋲と仏飯を並べる方法です。

また、大きさによっては上卓そのものを省略してしまう形もあります。

法要の際には上卓に内敷を敷きます。

 

前卓(まえじょく)

仏壇中段に置く机で、五具足を並べます。略式で三具足にすることも多いです。

前卓も上卓も、西と東の違いに足があります。西は足が内側に巻き込む猫足、東は外に張り出す丁足の仕様になっています。

 

五具足・三具足

五具足とは、花・香・灯の、礼拝の際に諸仏に供えるものの総称です。

外側から花一対、灯一対、中央に香を立てて五具足として並べます。

略式の場合は左から花、中央に香、右に灯の順に並べて三具足とします。

本願寺派の具足は菖蒲型と呼ばれます。銅に漆を焼きつけて宣徳色(黒っぽい色)の仏具を用います。

大谷派の具足は利久型や本山型と呼ばれ、真鍮本来の地金(金色)の仏具を用います。大きな特徴はローソク立てで、土台が亀、先端に向かって鶴の形状をした形で、「鶴亀」と呼ばれています。

浄土真宗では、報恩講などの特別な法要の時には五具足、普段は三具足でよいとされています。

 

内敷(うちしき)

内敷は「打敷」とも書き、どの宗派でも使用する仏具です。

他の宗派では四角の内敷を垂らしますが、浄土真宗では逆三角形のものを用います。法要や盆や彼岸や命日など、大事な仏事の時に荘厳します。

飾るのは上卓や前卓の筆返しという板に挟んで垂らします。絢爛豪華な刺繍柄がお仏壇を華やかに彩ります。

安価なものでは人絹から、高価なものは正絹や西陣織のものまでさまざまです。

また、身内に不幸があった時には銀や白の内敷を忌明けまで飾ります。最近はリバーシブルのものも販売されています。