さまざまな仏具 仏間編
仏壇で使用する仏具は、宗派などによって決まりがあったりしますが、家の方が毎日のお勤めを負担なくできるように、さまざまな便利な仏具が販売されていたりします。
ここでは、仏間で使用するのに便利な仏具について触れてみます。
経机掛け
経机とは、仏壇の前に置く机の事です。本来は名前の通り、経本などを置くための机ですが、最近の仏壇の小型化狭小化にともない、経机の上で、ロウソクの火を灯したり、お線香を焚いたりされる方が増えています。
そうすると、火の元がとても心配ですよね。
経机掛けとは、経机の上に敷く敷物のことで、「経机敷き」「経机カバー」などとも呼ばれています。
経机掛けの利点は2つ。
1つは、仏具などを置くことでついてしまう傷の予防。
もう1つは、火事の予防です。
市販のほとんどの経机掛けは、難燃加工が施されていて、つまり燃え広がりにくい仕様になっています。経机は唐木製のものであれ塗りのものであれ、木製でできていますので、火の元には十分に気をつけなければなりません。
もちろん経机掛けを用意したからと言って、完璧に防炎効果があるわけではありませんので、くれぐれもローソクや線香の扱いには細心の注意を払いましょう。
商品には塩ビ製のものから正絹や金襴の織物製のものまであります。仏具店に行く際には経机の天面の幅と奥行きを測っておきましょう。
防炎マット
防炎マットは、畳の上に敷く難燃加工の施されたマットです。
このマットの上に経机を置き、座布団を敷いてお勤めします。表面の柄は、唐草など、仏間に合うようなデザインのものが多いです。
マッチや線香の火で畳を焦がしてしまうことはよくありますので、火の元が気になる方にはおすすめの商品です。
座布団
仏壇で使用する座布団は、通常は寺院に座っていただくためのものです。普段は押し入れなどで保管しておいて、法事やお参りの際に準備しましょう。
座布団にもさまざまあり、綿を詰めた緞子製のものをよく目にしますが、実際に座布団で正座される寺院の声として、ふわふわしていて逆に座りにくい面もあるようです。そんな声に応えて、圧縮綿を使用した比較的固い座布団も出回っています。
また、夏用に、水色の涼しげな柄のものもあれば、い草の座布団もあり、夏冬兼用できるリバーシブルのものもあります。
ガラス
仏具として販売しているわけではありませんが、お仏壇をお手入れする上でガラスはすぐれものです。経机や、仏壇内部の段の天面に置きます。
仏壇は、唐木仏壇であれ、塗り仏壇であれ、お掃除やお手入れを丁寧に繊細にしなければなりません。毎日のお給仕の中で花の花粉が落ちたり、水が垂れたり、ご飯粒がこびりついてしまうのはよくあることです。また埃もたまりやすいですよね。
これらがしつこい汚れとなってしまってはさらに取り返しがつかなくなります。
あらかじめガラスを敷いておけば、その上に仏具を置くことで傷がつくこともなく、汚れがついても水拭きで強く拭きとることができます。
そんなに高額なものではないので、ガラス屋さんや仏具店に問い合わせてみましょう。
注文の際には、ガラスを敷きたい場所の奥行きと幅をきちんと測りましょう。また、ガラスの厚みは5ミリくらいがよいでしょう。
掛軸
床の間はハレの空間である客間に作られ、生け花や掛け軸を飾る場所です。
ただ、最近の住宅設計では、一つの和室の中に仏間と床の間が同じ並びに設計されていることが多いようです。
掛軸が登場した中国の北宋時代では「掛けて拝する」使われ方がされ、つまり礼拝用に用いられていて、仏教の仏画用として普及しました。日本に入って鎌倉時代の水墨画が流行すると、礼拝のためから、花鳥風月などの独立した芸術品として普及し、その観賞用に用いられていることが多くなりました。
現在でも、花鳥や山水などがよく飾られていますが、仏事や法事の時にはそれぞれの宗派に合わせた掛け軸を飾りましょう。
- 真言宗「南無大師遍照金剛」
- 浄土宗・浄土真宗・黄檗宗「南無阿弥陀仏」
- 臨済宗・曹洞宗「南無釈迦牟尼仏」
- 日蓮宗・法華宗「南無妙法蓮華経」
これら、御法号や名号やお題目だけでなく、それぞれの宗派にちなんだ仏画もあります。弘法大師の掛軸、親鸞伝説の仏画(「石枕」「川越名号」「御絵伝」など)、十三仏や各宗派の三尊(阿弥陀三尊、釈迦三尊など)もあります。四国八十八箇所や西国三十三箇所巡礼を周られた方は、そこでいただいた御朱印軸を飾る方もいます。
さらに、床の框に香台を置いて、掛軸の前に三具足を荘厳されればなおのことよいでしょう。
風鎮
風鎮とは掛軸の下部の軸先につける重しのことです。
陶器製や磁器製だけでなく、メノウ、水晶、黒檀などで作られたものもあります。
風鎮とは「風を鎮める」と書きますが、風に吹かれて掛軸が痛まないために使用するもので、同時に飾りの意味合いを持ちます。
ただ、最近の住宅は気密性が高く、昔に比べて掛軸が風で揺られることも少なく、風鎮を吊るすことによって逆に掛軸に負荷がかかるという見方もあるようです。そのため、軽くできたプラスチック製のものも販売されています。
防虫香
掛軸は紙箱や桐箱に納めて保管しますが、虫喰いやシミはよくあります。
何よりも掛軸は湿気を嫌いますので、紙箱より桐箱に納めて、通気性のよいところで保管が望ましいです。その上で、桐箱の中に防虫香を入れておくと、防虫や殺菌効果だけでなく、掛軸を取り出した時にお香の香りが漂うのでなおのことよいでしょう。
矢筈
矢筈とは、掛軸を飾ったり下ろしたりする時に使用する、1メートル前後の長い棒状の道具です。
棒の先端がU字の二股になっていて、ここに掛緒を引っ掛けるために、踏み台などを使用する必要がありません。
掛軸を掛けるときは、まずは矢筈の先端に掛緒を引っ掛けます。そして掛軸をゆっくりと広げながら矢筈を床の間の金具に引っかけます。最後はゆっくりと掛軸を下までほどいていきましょう。
掛軸を下げる時は、まず、片方の手で掛軸を三分の一から半分程度まで巻き上げます。そして矢筈で掛緒を引っ掛けて、ゆっくりと金具から取り外しましょう。一度畳の上に掛軸を置いて、最後は両手で巻いていきます。
矢筈を使わずに無理に飾ったり下ろしたりすると、掛軸に折り目がついたりしてしまします。そこまで高価なものではないので、ぜひ購入されるとよいでしょう。掛軸店や表具店だけでなく、仏具店でも販売しています。
仏間額
仏間額を掲げるのは浄土真宗に多いようです。仏壇を安置した仏間の鴨居に、「見真」額や「無量寿」額や「佛心」額を掲げます。そのほかにも、家紋額を掲げることもあるようです。
仏間額を掲げることで、仏間がより一層格調高く引き立つことでしょう。
なお、仏間の鴨居に故人の遺影写真を掲げるの控えましょう。ご本尊よりもご先祖様が上位に来てしまうからです。遺影写真を鴨居に掲げる場合は、仏間の側面などにしましょう。