さまざまな仏具 仏壇の中の仏具編
仏壇で使用する仏具は、宗派などによって決まりがあったりしますが、家の方が毎日のお勤めを負担なくできるように、さまざまな便利な仏具が販売されていたりします。
ここでは、仏壇の中で使用するのに便利な仏具について触れてみます。
法名軸
法名軸は、浄土真宗で用いる仏具です。
「法名」とは、浄土真宗における仏弟子に与えられる名前です。ほかの宗派では「戒名」と呼ばれているものです。日蓮宗系では「法号」と呼びます。
さて、「戒名」や「法号」といった死者の名前は位牌に彫刻して仏壇の中で祀るのですが、浄土真宗では位牌を作りません。浄土真宗では、阿弥陀仏がどんな方でも救ってくださるために、遺された家族が亡き人のために回向する(追善供養)という考え方がありません。位牌を作って個別に先祖を祀ることはせずに、阿弥陀仏だけを礼拝することを本義としているために、位牌は不要とされています。
けれど人間の心情としては個別に先祖に手を合わせたいもの。そこで浄土真宗では二つの仏具を用います。
1つは過去帳です。
過去帳は先祖の法名や命日などを書き記す帳面の事ですが、これを見台と呼ばれる台に載せて飾ります。
そしてもう1つが法名軸です。
本紙に亡き人の法名を書き記したものを掛軸に表装して、これを仏壇の中に掲げるのです。仏壇の背板には中央に阿弥陀如来、左右に脇仏(親鸞・蓮如、あるいは九字名号・十字名号の組み合わせ)の掛軸を掲げます。法名軸は仏壇の側面に掲げます。
法名軸の用意の仕方はいくつかあります。
- ①寺院に依頼する
- ②表具店や仏具店に依頼する
- ③仏具店で、市販の無地の法名軸を購入する
①や②は、葬儀の時に寺院から頂いた法名(法名や命日などが書かれた白い紙)を表装します。③は市販のものを購入して、掛軸の中央部分の本紙に直接、寺院に法名を書いていただきます。
また、浄土真宗では、院号法名を本山から授かることもでき、その場合は表装された法名軸を寺院を通じて本山よりいただくこともあります。
法名立て
最近よく出回っているような小型のお仏壇ではとても法名軸を掲げることができない。という声をよく耳にします。
でも、寺院からいただいたこの法名(法名の書かれた白い紙)はどうしたらいいのかと困る方もよくいらっしゃいます。
そんな方は「法名立て」という仏具を購入されるとよいでしょう。
法名は、普段は引き出しなどで保管されててもよいのですが、その方の法事の時には法名を、寺院や参列者が見える位置に置きます。法名軸が作れない場合は法名立てに入れて法名を仏壇の脇などで見えるように掲げましょう。
フレームが木製で内側がアクリルのものが多く出回っています。
回し香炉
法事の時に参列者が焼香する時に使用する香炉を回し香炉と呼びます。
お香の香りと煙を燻らせることが故人への供養だと考えられているので、線香を立てるのも、お焼香するのも、意味は同じなんです。ところが、法事や葬儀などで多くの方が集まられたときに、一人一人が1つの香炉に線香を立てていたら大変なことになるので、焼香と言う方法が用いられています。
普段、家族の方が使用することはありませんが、法事の時に複数、あるいは大人数がお参りに来られる場合には大変便利な仏具です。
回し香炉には専用の「焼香盆」というお盆が販売されているので、併せて購入されるとよいでしょう。焼香盆に載せて、香炉を隣の方に回していきます。
もちろん、香炉灰と、火種となる香炭、そしてお香が必要となります。ない場合はあわせて購入しておきましょう。
さて、回し香炉がなくても焼香はできます。
普段、線香を立てる香炉に、線香の先を灯して寝かします。香炭のかわりにするわけです。ここに香を落とすと立派なお焼香です。回し香炉がなくても、お線香と、香炉と、お盆と、香合(お香を容れる器)があればお焼香はできてしまいます。
LED灯明
従来のお仏壇では、唐木仏壇であれ、塗り仏壇であれ、仏壇の中を灯すための仏具がありました。
灯篭と、ロウソクと、輪灯です。
昔はこれらには本当のロウソクのあかり(輪灯は皿に油を浸して灯芯を使用する)を灯しました。
昨今は火事の危険性を考え、電気の線を這わせて、灯篭やロウソクなど、すべて電灯へと切り替わっています。スイッチ一つで、灯篭も、ロウソク(専用のロウソクの形をした電灯)も、輪灯も、すべてのあかりを灯しては消すことができます。
従来、一般的に使用されてきたのは100Vの電線ですが、火事やショートの危険性があるために、12Vの低電圧のものが長らく使用されてきました。
ところが、ここ2~3年ではLED照明の技術が発達したこともあり、仏壇用の灯明でも広く使用されるようになり、一般化してきています。
電気の線は、コンセントから電源を取り、スイッチコードを経て、仏壇内部まで這わせて分岐させます。
LEDですから、100Vや12Vの照明のように、球切れの心配は当分ないとのことですが、しかし万一が交換が必要な場合は、電球だけの交換ができません。分岐点から先の電線を交換しなければなりません。電球の交換をする必要がないというのがメリットであり、いざという時に電球だけの交換ができないというのがデメリットかもしれません。
電気ローソク
線を這わせるだけでなく、乾電池を電力としてあかりを灯すローソク型の仏具もあります。
コンパクトな仏壇に最適です。
電気線香
電気ローソクだけでなく、電気線香というお線香もあります。香炉から線香まで一体型で、おもちゃのようにも見えますが、ボタンを押すと線香の先が灯されるというものです。香炉の部分は陶器製のものやプラスチック製などがあります。
安全面では申し分がありませんが、ローソクは光りを灯すために電気を代替品にしてもよいとは思いますが、お線香のそもそもの意味は、煙と香りを燻らせてその場を清浄なものにすることにあるので、この商品の是非は首をかしげてしまいそうなものです。
ただ、火の元が心配だ、住宅の気密性が高くて煙や匂いの換気に悩まされている方などによく支持されているようです。
また、介護施設などにお仏壇を持ち寄る時に、個室での火の扱いが禁止されていることが多く、そのような場面で重宝されてもいます。
プリザーブドフラワー
三具足とは灯・香・花のことを指します。
灯も香も代替品。お花にもあるんです。
ただ、従来の造花はその質感が気に入らないという方も多く、最近ではお仏壇のお花のお供えにプリザーブドフラワーを選ばれる方がとても増えています。
プリザーブドフラワーとは、本物のお花を専用の液に浸して脱水脱色させ、潤滑液入りの着色液に漬けて、乾燥させて作るものです。ですから、造花とは異なります。
毎日のお花のお手入れが困難な方や、夏のお花のお手入れに困るに大きな支持を得ているようです。水を与える必要がなく、2~3年と長持ちします。
購入時は造花や生花に比べてはるかに高価ですが、長期間使用できる分コストパフォーマンスで損をすることはないでしょう。
ただし、寺院にお参りに来ていただく時には生花を供えてあげたいものですね。