1. ホーム
  2. 宗派毎の葬式
  3. ≫天台宗のお葬式

天台宗のお葬式

天台宗の基本情報

○開祖:伝教大師最澄(767-822)※出生については諸説あり

○本尊:久遠実成の釈迦如来(阿弥陀如来、薬師如来の場合あり)

※「久遠実成」とは永遠の過去から仏となって輪廻転生をして生きているという考え方です。実在した釈迦だけでなく、時間を超越して仏として在る釈迦如来を指します。

○本山:比叡山延暦寺(滋賀県)

○経典:法華経、阿弥陀経・光明真言など

○信者数:153万4871人(『宗教年鑑』文化庁編/平成24年版)

天台宗のはじまり

天台宗とはもともとは中国で始まった大乗仏教の一宗派です。中国の僧・天台大師智顗(ちぎ:538-597)が大成させたもので、天台山で弟子の養成に努めていたことから、この名が冠せられました。

日本の天台宗の開祖は最澄です。最澄は804年に桓武天皇の援助を受けて唐に渡り、この天台山に上ります。

天台教学を学び、また禅や密教を相承し(師匠から弟子へ悟りを受け継ぐこと)、翌年帰国して、806年に年分度者(国家公認の僧侶)となり、これが日本天台宗の始まりとされます。

天台宗の教え -顕密二教の法要儀礼-

天台宗は総合仏教だと言われています。護摩行、座禅、念仏、なんでもありです。これこそが天台宗の神髄です。

天台宗は顕教(けんぎょう)と密教(みっきょう)の儀礼を併用しています。

「顕教」とは経典などの言葉や文字によって全ての人々に教えが開かれています。つまり、文字や言葉で書かれているために勉強さえすれば誰にでも分かるということです。そして多くの人々を救おうという意味において開かれた宗教であり、大乗仏教的だと言えます。座禅、念仏、読経などを実践します。

「密教」とは加持祈祷や呪術などといった実践的な教義を、師匠から弟子に直接伝授しします。つまり、言葉や文字によって教えは体系化されていませんし、師匠と弟子による秘密裡の伝授ですから、その教えは広まりにくいものです。日本の密教といえば真言宗ですが、大乗仏教ではあるものの、その主眼は「自力本願」にあります。密教法要には土砂加持、祈祷、などがあります。

天台宗とよく比較されるのが真言宗です。真言宗は密教を教義の中心に据えましたが、天台宗はこの顕教と密教をバランスよく取り入れました。これが「顕密二教」です。座禅も、念仏も、祈祷もします。まさに総合仏教です。

そして、これこそがのちに花開く鎌倉仏教の礎になります。

○座禅を重視する禅宗(栄西、道元)

○念仏を重視する浄土教(法然、親鸞)

○法華経を重視する法華宗(日蓮)

、、、など、日本史で習ったことのあるこれらの僧侶は、みな比叡山で修業し、天台教学の中でそれぞれが重要だと考える要素を選び取って新たな宗派を立ち上げていきました。

天台宗の葬儀

葬儀では『法華経』を読んで懺悔し、『阿弥陀経』を読んで極楽往生に導き、光明真言法によって罪を滅するとされています。

故人には大乗仏教の修行者である菩薩になるための円頓戒(えんどんかい)が授けられます。

○本尊は釈迦如来(阿弥陀如来、薬師如来など定めなし)

○焼香回数は1回でよいとされています。丁寧にするなら3回

○唱える言葉は「南無釈迦牟尼仏」など

※本尊や焼香や経文に定めがなくて迷ってしまいますが、総合仏教の天台宗だからこその現象です。

1つの形式にこだわらずにあらゆる角度から仏性を感じるためのアプローチができるわけですから、これこそが天台宗の魅力かもしれません。

葬儀の流れ

全体としての葬儀の流れは以前の記事に書いた通りです。ここでは天台宗の儀礼を中心にまとめました。(あくまでも一例です)。

○臨終
枕経(安置された故人の枕元で読むお経)には阿弥陀経が読まれます。

○通夜

剃髪式(故人の頭に剃刀を当て、出家した印とする)、授要文、授円頓戒、位牌開眼式など。

仏弟子となった故人に天台宗の戒律を授け、戒名を与えます。

○葬儀式

次第の組み立て方によって大きく異なりますが、光明真言による光明供(こうみょうく)を中心にした葬儀では、葬式作法と引導作法との二部構成になります。

葬式作法は諸仏に対して、引導作法は故人を仏の世界に導く作法です。

  • 入堂
  • 列讃:お経に節をつけて唱える声明。
  • 光明供:光明真言を唱えて行う加持。阿弥陀如来の来迎を得て故人を仏とする作法。
  • 九条錫杖:錫杖(先端に音の出る金具のついた杖)を振って声明を唱えます。
  • 随法回向
  • 列讃
  • 鎖龕(さがん):棺を封じる儀式
  • 起龕(きがん):棺を葬場に送る準備
  • 奠湯(てんとう):霊前に密湯を供えます
  • 奠茶(てんちゃ):霊前に茶を供えます
  • 歎徳:故人の生前の業績を讃えます
  • 引導:導師が霊前に進み「菩薩戒偈」を唱え故人をこの世から浄土に送り出します。
  • 下炬(あこ):導師が松明を持ち、空中に梵字と円を描きます
  • 焼香:喪主、遺族の順で行います
  • 光明真言または念仏
  • 総回向
  • 退堂
  • 告別式~出棺