真言宗のお葬式
真言宗の基本情報
○開祖:弘法大師空海(774-835)
○本尊:大日如来
○本山:金剛峰寺(高野山真言宗/和歌山)
教王護国寺(東寺真言宗/京都)
善通寺(善通寺派/香川)
智積院(智山派/京都)
長谷寺(豊山派/奈良)など
※真言宗は主要な16派で18の本山があり、諸派を含めると約50もの宗派があり、その数だけ本山があります。
○経典:大日経、金剛頂経、理趣経など
○信者数:922万8148人(『宗教年鑑』文化庁編/平成24年版)
真言宗のはじまり
唐に渡った空海が長安の青龍寺で恵果阿闍梨から学んだ密教が基盤として真言宗を開創。816年高野山金剛峰寺を開創、823年教王護国寺を根本道場として宗団を確立しました。
以降、数多くの諸派に分かれてしまっているのは、宗団として師資相師承(師匠が弟子に直接教義を伝授する)を重視したためと言われています。教義を体系的に確立した天台宗とは対照的です。
最澄と空海
平安時代の仏教は「平安二教」とも言われ、現代でも信仰を集めている天台宗と真言宗が仏教界に新しい風を吹かせました。天台宗の開祖は最澄、真言宗の開祖は空海で、わずか7歳差の二人と、彼らが開いた宗派は何かと比較の対象になります。
二人は同じ船で唐に渡りました。エリート僧だった最澄は天台教学を学んだのに対し、無名の僧の空海は長安の恵果阿闍梨から正当密教を相承します。
帰国後、自分の学んだ教学や密教には不備があることに気づいた最澄は、空海に真言密教を教えてほしいと乞います。このあたりから、実績や年齢差が逆転した二人の師弟関係が始まるのですが、最終的には決別してしまいます。
というのは、『理趣経』という経典を貸してほしいと最澄の求めを空海が拒んだり、最澄の愛弟子の泰範を預けたまま帰って来ずに空海の愛弟子になってしまっていたりというエピソードもありますが、実践的な僧侶の空海と、学者肌の僧侶の最澄の密教観の違いが、決別の理由だったと言われています。
真言宗の教え -三密加持による即身成仏
真言密教は師資相承を重視します。経典の書写などの学問的な方法による悟りではなく、教えは師匠から直接弟子に伝授されます。また、空海は、顕教や各学派の教学を評価しつつも、それらはすべて密教に包摂されるとして、密教の優位性を説いています。このあたりに最澄の天台宗との違いが見て取れます。
そして衆生救済よりもまず、三密加持による即身成仏(自力本願)を説いています。密教の修行の実践により誰でもただちに仏になることができるという教えです。
三密とは、手に印を結び(身密)、口に真言を唱え(口意)、心に仏を想う(意密)のことを言います。
「印」とは左右の手指で複雑な印相を組み、仏やその働きをあらわすことです。「真言」とは諸仏に発願を働きかける呪文です。これらを正しく修することで大日如来と一体となり即身成仏ができると説いています。
また真言密教では事相(修法の実践)と教相(理論)のバランスが大切であり、その両方を習得することの重要性を説いています。
大師信仰
宗派は無数に分かれてしまいましたが、弘法大師は今でも絶大なファンを持つ高僧です。
四国八十八箇所霊場の巡礼者(お遍路さん)あとを絶ちませんし、家の宗派と別に弘法大師を祀り、真言密教を実践する人も数多くいます。日本各地に今も伝わる弘法伝説も、空海の求心力を表しています。
真言宗の葬儀
葬儀では死者を大日如来の密厳浄土か弥勒菩薩の兜率天浄土に送る儀式です。
また、真言宗の葬儀の特徴は「灌頂」だと言われています。故人の頭に水をそそぎかけます。
○本尊は大日如来
○焼香回数は3回です。
○唱える言葉は「南無大師遍照金剛」 ※これを「御宝号」と呼びます
葬儀の流れ
全体としての葬儀の流れは以前の記事に書いた通りです。
ここでは真言宗の儀礼を中心にまとめました。
また、真言宗は諸派ありますので、地域性なども含めてこの限りではありません。
臨終
枕経をします。
『般若理趣経』、真言、陀羅尼などが読まれます。
納棺
土砂加持をします。
光明真言で祈願した土砂を身体にかけて納棺します。
通夜
『理趣経』、慈悲の呪、光明真言など
葬儀式
- 入堂
- 塗香、三密観、護身法、加持香水の法:導師の準備作業
- 三礼・表白・神分・声聞
- 剃髪:仏弟子として仏に帰依することを誓う
- 授戒:戒名が故人に授けられる
- 表白:仏を讃え、これから行う儀式の成就を祈ります
- 神分:諸仏を勧請します
- 引導:光明真言、六地蔵と不動の真言、不動灌頂と弥勒三種の印明などを授けることで故人は即身成仏します。その後『理趣経』読経
- 破地獄真言:故人の心にある地獄を取り除き、金剛杵(法具)を授けます
- 金剛界胎蔵秘密印明と弘法大師の引導の印明
- 位牌開眼、血脈授与
- 焼香:諷誦文を唱える中、遺族参列者は焼香します
- 導師最極秘印
- 退堂
- 告別式~出棺